肯定的な体験談を集めることと、患者の意見を受け止めることを分けて考えます。
病院・クリニックの口コミ対策では、評価を上げる方法を選ぶ前に、どんな投稿を、誰が、何のために依頼するのかを確かめます。患者が自分の意思で書いた感想と、医院が肯定的な治療体験を集めて広告に使うことは、同じ扱いではありません。
待ち時間への不満に返信するときも、公開の場で個別の受診内容を説明する前に、患者情報を守る必要があります。この記事は、院内で口コミの案内・返信を担当する方に向けて、依頼前の確認と、待ち時間の声を受けた後の対応を整理します。
この記事の目次
1. 自主的な投稿と、医院が依頼・掲載する体験談を分ける
厚生労働省の医療広告Q&Aは、医療機関が患者や家族に肯定的な体験談の投稿を依頼した場合、有償・無償を問わず、その体験談に誘引性が生じるとしています。治療の内容や効果についての体験談を集める場面で、「謝礼を出していないから広告とは関係ない」と判断するのは適切ではありません。
一方、個人のSNSや第三者の口コミサイトへの自主的な投稿が、すべて医療広告になるという説明でもありません。医院からの依頼、費用負担、便宜の提供、内容の編集など、誰が投稿や掲載に関わったかを区別する必要があります。
| 場面 | 確かめること |
|---|---|
| 患者が自分で投稿する | 医院による依頼・費用負担などがあるか。独立した投稿という前提が実態と合うか |
| 医院が投稿を依頼する | 肯定的な治療体験を求めていないか。依頼文、対象者、謝礼や文案の扱いはどうなっているか |
| 口コミを医院のHPへ掲載する | 治療の内容・効果の主観的な体験談を広告に使っていないか。好意的な部分だけを選んでいないか |
患者の主観や伝聞に基づく治療内容・効果の体験談は、広告できない事項です。「患者本人の文章だから」「掲載の同意があるから」という理由だけで、医院のHPに自由に転載できるわけではありません。投稿先だけで区切らず、その後の使い道まで含めて確認しましょう。対象となる考え方は、医療広告Q&AのQ1-18、Q2-9、Q2-11で確認できます。
2. 依頼する言葉・相手・仕組みを一緒に見直す
案内を出す前に、受付で使う言葉、案内紙、メール、投稿先へ進む画面を並べて読みます。医院の方針が中立でも、画面では高評価を選んだ人だけが投稿へ進む、といった違いがあれば、文面だけの確認では実態を把握できません。
特に確認したいのは、治療の効果を褒めるよう求めていないか、肯定的な声だけを集める仕組みになっていないか、医院側が投稿文を作成・編集していないか、という点です。患者に頼む言葉と、運用サービスの動きを別々の担当者任せにせず、同じ確認対象として扱います。
「中立な案内なら、どんな方法でも大丈夫」とは決めない
依頼文の言い換えだけで、広告上の扱いが一律に確定するわけではありません。依頼する内容や掲載方法などによって確認が必要です。医療広告の条件とは別に、投稿先のサービスのルールも確かめます。
院内の意見収集と、Googleへ公開投稿してもらう案内も分けて整理します。どちらに答えているのか、回答がどこへ出るのかが患者に伝わるかを見ます。これは案内を見直すための運用上の提案であり、この形にすれば必ず適法になるという手順ではありません。判断に迷う依頼方法は、実際の案内を用意して、医療機関を所管する自治体の窓口などへ確認してください。
3. 待ち時間の声には、受け止める・案内する・院内で確かめる
「長く待った」という投稿に対し、診療の事情を詳しく説明しようとすると、特定の患者の受診状況や治療内容に触れるおそれがあります。まず、公開返信で伝えることと、本人確認のうえで個別に確かめることを分けます。投稿だけで来院者を特定したり、その日に起きたことを決めつけたりしないことも大切です。
公開された意見の内容を読む
待ち時間そのものへの不満か、時間の説明がなかったことへの不満かを読み取ります。この段階では、誰の診療だったかを公開返信に書くための調査はしません。院内で確認が必要な内容を切り分けます。
公開返信は一般的な受け止めと窓口の案内にとどめる
意見を受け止めていることと、個別の事情を伝えられる連絡先を案内します。実際に受け付けている窓口を確認してから載せ、返信の中で個人の診療経過を説明することは避けます。
本人確認を伴う対応と、院内の改善へつなぐ
個別の確認は院内の手順に沿って行います。案内表示や受付での説明など、患者情報を公表せずに改善できることがあるかを担当者で確かめます。未確認の改善や待ち時間の短縮を、返信で約束しないようにします。
文例は、事実の認定や改善の約束を含めない
以下は公開返信を考えるための筆者作成の文例です。実際の医院の返信や患者の事例ではありません。院内の方針と、利用できる窓口に合わせて調整してください。
公開返信の文例
「待ち時間についてのお声をお寄せいただき、ありがとうございます。個別の状況については公開の場でお答えすることを控えております。詳しい内容をお伝えいただける場合は、当院の相談窓口へご連絡ください。」
この文例だけで十分かどうかは、投稿内容や院内の受付体制によって異なります。苦情に関係する個別情報を確認する場所として、公開コメント欄を使わない、という考え方の例として読んでください。
4. 返信に患者情報を足さず、掲載同意と広告条件を別々に確認する
個人情報保護委員会と厚生労働省のガイダンスは、病歴、診療の過程で知った身体状況や治療情報などを要配慮個人情報として扱っています。診療記録は個人データに該当し、第三者への提供には原則として本人の同意が必要です。法令に基づく場合などの例外はありますが、口コミへの反論をそのまま例外と考えることはできません。
公開返信では、名前だけでなく、受診日、検査や処置の内容、家族とのやり取りなどを組み合わせることで本人が分かる場合にも注意します。投稿者が自分で病状を書いていても、医院が持っている診療記録を補足してよいという同意まで確認できたことにはなりません。
こうした一般原則を踏まえ、個別の情報を公表する根拠を確認できないときは、公開返信へ書き足さない運用を検討します。これは医療・介護関係事業者の個人情報ガイダンスを公開返信に当てはめた提案です。同ガイダンスが、Googleの返信をすべて禁止しているという意味ではありません。
また、個人情報を公表することへの同意と、医療広告として載せられる内容かどうかは別の確認です。患者情報の同意があっても、治療効果の体験談を医院の広告に使えることにはなりません。公開前に「患者情報の扱い」と「体験談を使う広告の条件」の両方を点検してください。
よくある質問:HPへの引用・返信の可否・投稿者が分からない場合
本人の文章であることだけでは決まりません。治療の内容や効果についての主観的・伝聞の体験談は、医療広告の禁止事項です。転載への同意と、広告できる内容かどうかを分けて確認します。
今回確認した公式資料は、返信を一律に禁止する専用のルールではありません。ただし、個別の患者情報を公開してよい根拠があるかは別です。一般的な案内と、本人確認を伴う非公開の対応を分けて考えます。
来院者だと決めつけず、投稿に書かれた意見を受け止めるところから検討します。院内の情報を使って公開の場で本人を特定しようとせず、必要な確認を受け付けられる実際の窓口を案内する運用が考えられます。
確認に使った公式資料
厚生労働省の医療広告等ガイドラインQ&AのQ1-18、Q2-9、Q2-11と、個人情報保護委員会・厚生労働省のガイダンスを確認しました。Q&Aの改訂履歴は2026年3月、個人情報ガイダンスは2026年4月一部改正です。2026年10月19日の確認範囲をまとめたもので、個別の依頼方法や返信の適法性を保証するものではありません。




